菱沢九月&高久尚子(徳間書店キャラ文庫)
一度読み終えた時にこの「小説家は懺悔する」というタイトルが深い意味を持っているのかもしれない、とあれこれ考えさせられました。文字通りに受け取ってしまってもOKだとは思うんですけど、どうも含んだものがあるような気がする・・・はずしていたら恥ずかしいので言いませんけど(笑)ぜひ一人でも多くの方の感想を見てみたいストーリーでした。かなりヘビーな設定をあちらこちらに散りばめている作品なので、死というものや孤独というものを必要以上に重く受けとめてしまう方や、そういった感情に引き摺られやすい方には辛い一冊かもしれません。目で追っている文字以上の感情を読み手に感じさせる気がします。同様の設定を持つ作品は他にも今まで目にしてきましたが、ちょっと一線を画している気がします。個人的主観ですがきっと菱沢先生が用いられる表現方法に私はそういう印象を受けているのだと思う。比喩表現なのに生々しい雰囲気を感じる部分が結構あったので。
主人公の律(受)は働いていた店の店長と不倫関係にありましたが突然相手に夜逃げされるという目に合い、茫然自失となった彼は友人の克巳を頼ります。職も家も一度に失ったショックは想像以上に彼にダメージを与えましたが、少しだけ浮上した頃に克巳からバイトの話を持ちかけられる。内容は克巳の兄・匡史の友人である人気小説家の佐々原脩司(攻)の自宅で住み込みで家政夫をして欲しいというものでした。これが二人の出会いになります。
まず、この二人に共通する点であり同時に全く違う点でもある重要なポイントはお互いが幼い頃に親を亡くしているという事。しかし、その事情は大きく違っています。律は両親を事故と病気でなくしていますが佐々原は両親の離婚後に共に生活をしていた母親が自殺。更に結婚後に妻も自殺で失っています。共に孤独というものを味わってきた二人ですがその重さや内容は天と地ほども違うわけです。そしてそんな二人が出会ってどういう時間を過ごしたかという事がかなり重要なんですが、初日から律は佐々原に抱かれ、それ以降も二人は言葉もちゃんと交わした上で抱き合うのですがこれに納得していたのは佐々原だけだった。律は恐がりで臆病な人間だったため、佐々原の言動を信じようとしながらも心の底では信用できていなかった。それ故に律は佐々原と離れる事にしたのですが、この出来事がなければどちらにせよ先に律という人格そのものが破滅していたかもしれない。
佐々原は経験の割には強かだったので自分の過去も弱さも隠さず見せて律に甘えてさえいましたが律はそうじゃなかった。佐々原も過去の失敗を思い律が離れていかないように自分の全てを見せたのでしょうが、根本的な部分で律が恋人だという事を理解しきれていなかったのでしょう。このすれ違いは皮肉なことに佐々原にとっては妻を失った時とほとんど同じものだったかもしれない。ただ、今回は失わないように努力をしていただけに律が出て行った後の佐々原の荒れ様は酷いものでした。対する律は匡史に佐々原を捨てたと叱られる。そしてやっと自分が本当に恐れていたことは何だったのかに気付く。基本的に律の場合は恋愛としての悩みだった(もちろん付随する諸々の事もありますが)事に対し、佐々原の場合は過去に依存したままであった自分に気付かなかったから問題は大きくなった。生きている人間と死んでしまった人間は違うのだと、どこかで区別を付けないといけないが佐々原は出来ていなかった。きっかけは二人の過去とは無関係の事から起こったこのすれ違いも長い目で見ると必要不可欠な衝突だったのかもしれません。最終的に大事なのは二人が孤独ではなくなったという事よりも自分が愛している人間を手に入れたという事が重要なんだろうな、と思った。
余談ですがこの二人の関係修復に匡史が活躍するのですが、実は私はこの匡史のようなタイプの人間はちょっと苦手。もちろん悪い人間でもないし、むしろ二人のために嫌われ役を買って出るような出来た人間なんでしょうが、どうにも駆け引きめいた事が上手すぎてダメでした。もちろん言っている事は間違いじゃないんですけどねぇ。やっぱり人間関係って難しいですね。

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>>魚住さん
こんにちは〜コメントありがとございます**
魚住さんの感想を拝見させていただきましたよ〜。
いつものような感情重視な感想がとてもおもしろかったです。
ヘビーなテーマでしたけど、それだけじゃない何かか感じられるお話でしたよね、この作品は。私もおもしろかったと思います。
ラストが本当に普通で、だからこそそれが良かった。
平凡に見えるシーンこそが何よりだなぁと、二人の辿ってきた過去からするとそれを強く思います。
>タイトルの深読み、気になります。。
こう・・・懺悔という言葉の意味ですね。色々と気になって考えたりもしました。この言葉が向けられる相手は誰なのか?とか、懺悔という言葉の中に含まれる内容には何があるのか?とか・・・佐々原からすると1つの言葉に2つも3つも含まれていそうで、それが気になってしまったんですよねぇ。
うーん、ムズカシイ!
こんにちは、suzuyaです。
TBありがとうございました。
HACCAさまのレビューは凄く内容が濃くて、指摘されて始めて「ああ、そういうことだったんた」と納得させられたり、考えさせられることが多くて、圧倒されます。
私は「感覚」で物事を捉えがちなのですが、HACCAさまは非常にしっかり作品を読み込んで、ちゃんとご自分で咀嚼して文章にされているなぁと、あこがれます。
この作品のレビューも拝見したとき、物凄くショックでした。ああ、もっとしっかり作品を読み込まなければならないな。と。
長々と申し訳ありませんでした。本当に読んでよかったと思わせられるレビューでした。ありがとうございました。
>>suzuyaさん
こんばんは!レス遅くなってすみません(汗)
レビューと言うか、もうウチは完全に感想ばっかりなんできっと正反対の感想を持たれる方もいらしゃると思いますし、軽い気持ちで読んでいただけたら気分がラクです(笑)
でも、過分にして「考えすぎ」的な部分はあるかもしれません。確かに。実は私もほとんどは感覚でとられてるんですよ〜。
で、それを感想として書く時にとっかかりをどこにするか等で悩んでなんとか文字にしている・・・という感じです。だから一日に何本も感想を書けないという悲しい事実が(笑)
一冊の感想を書くのに時間がかかってしまうんですよね。だいたい平均して1〜2時間かかってしまうんですが、これって時間かかり過ぎなのかな?と思う事も多いですよ。まま、考えても詮無いのでこれからも自分のペースで続けていければいいなぁと思ってます。
ハッカさん、こんにちはー。魚住です。
やっと手に入ったので、きのう読みました。
感想も、へっぽこぴーながら書いてみました。。
だからやっと、書いてあることは知ってたハッカさんの感想を読みにきましたよ。
ハッカさんの、タイトルの深読み、気になります。。
あとがきに書いてあったこととは関係ないのかなあ。。気になるー。
>孤独ではなくなったという事よりも自分が愛している人間を手に入れたという事が重要
ほんとう、そうですね。
なにかいろいろ感じるお話でした。。
ラストがすごく好きでした。。
ありがとう 魚住