秀香穂里&祭河ななを(徳間書店キャラ文庫)
この作品の何が良いかって、それはもう「働く男」がメインのBLであるという点です。スーツを着てればOKというわけではなく、ちゃんと仕事部分の描写にも重きが置かれていないと働く男がメインとは言えないと思っています。スーツを着た男の恋愛模様ばかりでは物足りないのです。出来れば恋愛部分:仕事部の割合は6:4若しくは5:5もあると嬉しいですね。しかし、実際にはこの割合な場合はあまりなく・・・。
そんな中で、この作品は仕事部分の描写がとても多いので結構気に入っています。やはり働く男という設定があるならばこうでないと心から楽しめません。リーマンであるならば、日中は働いてばかりというのがむしろ普通なので、仕事部分の描写が多い方がリアリティが増します。
この作品の舞台はゲーム業界。ゲーム業界というと昼夜逆転といったイメージがありますが、今回の主人公たちは開発メインの方々ではないので行動時間はむしろ普通のリーマンに近い感じです。それにしても祭河ななをさんのカバーの綺麗さといったらもう・・・最近は可愛らしい傾向のある祭河さんですが、この頃は線が細く綺麗といったイメージの方が強いですね。どちらも好きなのですが、この本のカバーは数あるBL小説の中でも個人的にはめちゃくちゃ気に入っているものの一つです。シンプルイズベスト、色数も色合いも全て好きです。タイトルロゴもいい味を出してくれています。
主人公はヤリ手の広報マンである澤村(攻)。彼の勤めるナイトシステムというゲーム会社に業界内では超有名なトップディレクターである水嶋(受)が移籍してきたところがスタートになります。澤村は自信家でもちろんそれに見合うだけの仕事をこなす人間なのですが、初日から水嶋とは肌が合わないと判断したためか、常に水嶋という人間の実力をはかるような事ばかりを続ける。そして二人で飲みに行った時に偶然水嶋がゲイであるという事に気付き、彼はそこに付け入る行動に出る。業界内ではトップクラスであり誰もが尊敬する水嶋の弱点を握った上に水嶋を動かせる決定権が自分にあるという事を澤村は瞬時に把握してしまったから。
ストーリーの進行は澤村視点で進められているのですが、この澤村がかなり嫌な人間でして・・・ラスト近くまでは嫌な人間のままだったりします(笑)自他共に認める遊び人である澤村は水嶋でさえも興味本位で彼を抱き、振り回す。そんな優越感に浸っていたの澤村に頭から水をかけ人間としての本質の薄さに気付かせたのは水嶋の「不誠実」の一言でした。男としてのステイタスかどうかは知りませんが、恋愛経験が多いというのは何の自慢にもならない。むしろ、一人の人間と長く続かないという事実そのものに問題があるのだと澤村が気付き始めた時には二人がすれ違いってしまった後でした。
この作品は読めば100%、キャラの心情が細部まで理解する事ができます。秀香穂里先生の作品は常にそういう傾向が強く、読後に考え込むといった事が少ない。小説にはいくつかの種類があると思うのですが、キャラの心情を読み手に感じさせるものと、読み手に教えてくれるものがあり、この作品は断然後者。読めば必ずわかります。なので、読後感はとにかくスッキリという感じ。小説の在り方としてどちらが良いのか答えはありませんが、全体的に繊細で硬質なイメージのあるこの作品の場合はむしろ全てを書き切った形の方で合っていると思う。ぼかしてしまってはキャラの性格に合わなかったでしょう。その成果もあってか、ラストはとてもさっぱりした形に仕上がっています。純粋に「これから」という言葉が似合いそうな終わり方でして、このラストはかなり好きですね。澤村という人間が急に水嶋一辺倒になっていない辺りも逆にリアリティを感じさせてくれ好感が持てます。人間、そんな急には変わりたくても変われないものですからね。等身大・・・というと少し違う気もしますが、年齢に見合った臆病さと傲慢さ、そういったものが楽しめる作品でした。

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>>Juraさん
こんばんは**
お忙しいのにコメントまでありがとうございます。
「くちびるに〜」はカバーデザインから全てひっくるめて保存しておきたい一冊なんです、私には。やっぱり良い・・・働く男は最高デスよ。
>高月さんのはまとめて書くか、1冊づつ分けて書くか〜
おおう!
拍手レスでねだってみた甲斐がありました(笑)
シリーズものはまとめて感想を書いても通じるとは思いますよ〜。私は単にまとめ方が下手なのでバラバラに書いた・・・いや、書くしかなかったと言うか。
感想がアップされるのを楽しみに待ってます!
ハッカさんこんばんは〜
高月まつりさんのを読んだ後にこれを読んで、高月さんの感想を書く前にこれの感想を先に書いちゃいました(笑)
ハッカさんの言う通り「働く男」の恋物語でしたね、こういうのって結構好きです、澤村の態度にかなりイライラさせられながらも、かなりリアリティのある話しで、楽しんで読むことが出来ました。
この先どうなるかさっぱり判らない二人ですが、だからこそなのか、妙に気になって仕方ない二人でもあります。
高月さんのはまとめて書くか、1冊づつ分けて書くか悩み中^^;)
でもあれもかなり面白かったです。