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INDEX英田サキ夜が蘇る

夜が蘇る 夜が蘇る

英田サキ&山田ユギ(プランタン出版プラチナ文庫)

英田先生の新刊はオンライン小説サイト巡りをしていた方には馴染みのある作品。先生の旧サイトにて掲載されていたヤクザと探偵のストーリーから同人誌発行までされたシリーズの商業化作品です。実は商業化を記念して過去の同シリーズの番外編がいくつか現サイトにて読むことが出来ますので、旧サイト時代をご存知ない方は今の内にぜひどうぞ。ただし、やはり過去の作品だけあり現在の力量と比べると多々見劣り(読み劣り?)する点はどうしてもあるので、その辺りはご理解のうえ楽しんでくださいませ。出来れば本作を読み終えてから読まれた方がより楽しめると思います。

主人公は元エリート警視であり現在は探偵である秋津(受)。彼が何故エリートの道からはずれ現在の生活を営んでいるか・・・そこにはこの作品における最重要とも言えるべき過去があります。その辛い経験から以後の秋津はまさに生きる屍のような状態であり、ただ息をしているだけの人形とも言えるような覇気のない生活を送っている。そんな秋津の生活も生き方も大きく変える人間がとうとう現れる。秋津の任せられている探偵事務所の前所長に恩があると言う久我(攻)はヤクザの若頭なんですが、何が目的か頻繁に事務所に足を運んでくるようになっていく。
この二人がストーリーの中心人物ですが、その間には実はもうこの世にはいない一人のヤクザが存在します。秋津がドロップアウトした原因とも言えるその男は、組を裏切り追われた挙句に命を落とした羽生(はぶ)という名のヤクザ。本作は秋津と久我が恋愛感情というだけとはまた少し違う感情で向き合うようになるまでが収録されていますが、このヤクザの存在なくしてはこの二人のストーリーはないに等しいので彼は重要なキーマンです。

過去、警視であった秋津は幼馴染でもあった羽生と身体の関係を持っていた。そこにあったのは恋愛感情かと思えるが、本当は少し違うのではないかなと推測している。現在の秋津の覇気の無さは情人を失った悲しみからくるもので間違いはないが、読めば読むほど二人の関係は恋愛関係とは違うもののように思える。羽生はきっと幾ばくかの愛を持っていたとは思うのですが、秋津の方はむしろ同病相憐むといった気持ちの方が強かった気がする。エリートとしての道を歩むそのストレスや苦悩の一切を一時でも忘れたいがために足繁く羽生のもとに通い、彼を欲し抱かれ続けたのではないだろうか。そして羽生も秋津に対しては愛はあると言っても憐憫の情に近いものだったように感じる。しかし羽生はそれでも秋津を一人の人間として愛したのは確かだったし、秋津もまた羽生を失えない存在として愛していたのは間違いない。ただ、恋愛という意味での愛であったかどうかに気付いていたのは羽生だけだったかもしれないだけで。刹那的・破滅的な関係にある種の高揚感もあったのかもしれないと思わせる表現も見られますし、英田先生の書かれる同性愛にはこういった類のものをよく見ます。
久我という明るくストレートに感情を向けてくる存在と出会った事により、秋津は少しずつではあるが羽生に対して持っていた情とは別の感情を抱くようになっていく。想像するに、羽生とはただ欲するだけの関係だった事に対し、久我はまず秋津ありきで好きだという気持ちを伝え、そこに重点を置く関係を作り出そうとする。この違いには天と地ほどの差があり、今後その違いを秋津がどう解釈していくかによりストーリーは大きく変わるのですが、精神的に支えにしていた人間を突然失ってしまったという現実とタイミングがいつまでも羽生を忘れさせない大きな原因なのかもしれない。羽生の愛を思い知ったのが彼が事切れる直前だっただけに尚更。最期のその瞬間にそんな事実を知ってしまったら誰だって簡単には立ち直れないだろう。むしろ束縛されてしまうだろう事は容易に想像できる。秋津が数年経った今でも羽生を忘れられないのも仕方ない。愛には様々な形があるのだから。

きっと秋津の羽生への感情がなくなる事はないのでしょう。それは、久我が彼と同じ世界に見置いている人間だという事と、同じようにいつ命を落とすかもしれない危険性と隣り合わせにいる現実がある限りは囚われ続けるのだと思う。久我がそんな想いを抱えた秋津という存在そのものを愛してやると言い切った部分にはそういった事への配慮があるのかもしれないし、単にその静かな激情を無くしては秋津という存在たりえないと思っているのかもしれないが、どちらにせよ久我という人間の愛は秋津にとって羽生への感情とはまた別の何かを確かに生み出すのだと思う。羽生との逢瀬で見せていた姿にこそ自分の本性があると秋津は知っており、久我もまたそんな秋津にこそ魅かれたのだから、ラストで秋津が自分の夜だけを与えると言い、久我もまたそれを了承する意味は大きい。
現在はエスシリーズもあり、そちらの動向も本当に気になっていますが、この作品も出来れば続きを見続けたいものです。それくらいの魅力がキャラと設定にはあると思うから。この作品もその後が気になると思われる方は多いかもしれません。


4829622954夜が蘇る
英田 サキ 山田 ユギ
プランタン出版 2005-08-10
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HACCA at 2005.08.20 | Comments (10) | TrackBack (5) | Clip!! | BlogPeopleTags | はてなブックマーク

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コメント
Jura(05/08/21)

こんにちは
私もハッカさんが言うように秋津と羽生の間には恋愛感情っぽいものは
無かったんじゃないかなと思います、文中に度々出てくる昔の二人の
関係とか、秋津が抱いていている思いとか見ても恋人同士って感じは全然受けませんよね。

でもやはり大切な存在(大切…?これもちょっと違う気もしますが、かけがえの無いもの?)であった事は確かでしょうし、自分の人生の中ではそれほど重きを閉めて無くても、自分の知ってる人間が居なくなる(亡くなる)って事はかなり辛い事だろうと思うからそれ以上であったらなおさらですよね。

この先久我と秋津の二人はどうなるのでしょうか、私もとても気になるひとりです。
ではでは

HACCA(05/08/21)

>>Juraさん
こんばんは?。
いつもいつもコメント頂くばかりでスミマセン!

>恋人同士って感じは全然受けませんよね

やはりそう感じますよね。
私も愛というよりも情?とか思いましたもの。少なくとも幸せを追うような恋愛感情ではないよなぁと。

>知ってる人間が居なくなる(亡くなる)って事

結局ですね、そういう部分が強いんじゃないかなって思うんです。ぶっちゃけると。あの関係に自分の精神面の依存があるものだから、いつまでも引き摺っているのであって、それは愛しい人を忘れられないというものとは違うんですよね。だからいつまでたっても前向きにもなれずに虚ろになってしまう。
難しいですね、人間の感情というものは。

その他の作品ともまた違ったテイストのあるストーリーなので、私もその後が気になります?。似たような設定でどこまで違う結末を導き出す事が出来るのか、それが英田先生への期待ですね。

あすた(05/08/22)

こんにちは。
お言葉に甘えて連日…。(^▽^;)

ああ、そうか、秋津と羽生は恋愛感情ではなかったんですね!
そういわれてみれば、そうかもしれない。
このお話、私の好きな萌え要素がいっぱいだったので、あまり色々考えずに読んでしまいました。

ますます羽生と秋津のお話が読みたくなりました。

数時間前にTBとコメントを送ったつもりだったのですが、反映されてなかったので、再信します。
もし、だぶってたら、すみません。

HACCA(05/08/22)

>>あすたさん
こんばんは?コメントいつもありがとうございます**
連日でも全然OK、むしろ嬉しい!なので。

>秋津と羽生は恋愛感情ではなかったんですね!

正確なところはもちろんわかりませんが、私としてはそういう風に見て取れました。ただ、やっぱり愛にも色々あるだけに、良いのか悪いのかはなんとも言えないところですね。
あの二人がどうなるか、とても気になります。私も!

あと、トラックバックについてはお手数をおかけします(汗)
重複だったりはしてませんでしたのでご安心くださいませ。

リリカ(05/08/23)

こんばんは。

感想を書くときに、「情人」っていう言葉が使いにくくて、他の言葉に置き換えようとしたんですけど、「恋人」でも「愛人」でもないような気がして。
このあたりが、余計に、秋津の心にひっかかってるのかもしれませんね。

TBさせてください?

HACCA(05/08/23)

>>リリカさん
こんばんは**
この作品は実はエスシリーズ以上に根深い仕上がりが期待できると思うんですよ!もちろん書き方次第なんですけど。

今回、羽生を「情人」と表したのは良い得て妙だな、と。
ヤクザだからこの言葉というわけでもなくて、一番この単語がしっくりくるような気がしますよね。
辞書で見る限りでは情人=愛人となっていたりしますが、微妙に違うと思うので、今回の場合はやっぱり情人かな。
この単語を「じょうにん」と読むか「いろ」と読むかでもまた言葉の持つイメージが変わってきそうですよね。
やっぱり日本語っておもしろいです。

リリカ(05/08/24)

またまた失礼します。

>辞書で見る限りでは情人=愛人
そうなんですよ、でも違いますよね。
「いろ」っていうのは、久我が言うと艶っぽくて素敵です、ふふ。

「エス」のときもそうだったんですが、しばらくは久我と秋津が忘れられません。英田先生のキャラは、あとをひきます。

ではまた♪

HACCA(05/08/24)

>>リリカさん
あ、やっぱりリリカさんもそう感じます?<愛人
同じようでいてちょっと違う。
何事も決まり通りには言い表せないものですよね?。
どちらかと言うと明るさも持つ久我だけに「いろ」って呼ぶと艶がありますね!

>英田先生のキャラは、あとをひきます。

確かに・・・。複雑ですが、そうです。私も。
だからこそ魅力的なんですよねぇ。ハッピーエンドばかりじゃないだろうなぁって予想できても、それでもです。やっぱり複雑(笑)

椋木(05/08/27)

ハッカさん。ども。椋です(^-^)/
早速記事読ませていただきましたよ?♪

「静かな激情」。確かにそうですね。普段はクールなのに下の方で沸々としているマグマに惹かれて久我なんかは近づいてくるのかも。本能!? ウム。なるほど!と思いました。

>ラストで秋津が自分の夜だけを与えると言い、久我もまたそれを了承する意味は大きい。

そういえば夜を与えるって言ってましたね。いやぁ、今思い出しました。あは。(^^ゞ  …私的に秋津という人物は情が恐い人だと思うのですよ。いろんな記事を読んでコメントを書いたりしていると、久我と秋津に関しては時間がすべてを解決するような気さえしてきます。つまり、秋津が久我に馴染んで羽生を思い出として語れるようになる、ということですが。

1冊の本に様々な感想があるので、本当に楽しいですね。
またお邪魔します(というか、よく覗いてます?♪)のでよろしくね。では。

HACCA(05/08/28)

>>椋木さん
こんばんは!いらして下さってありがとうございます?**

>クールなのに下の方で沸々としているマグマ

そうなんですよ?こういうイメージが秋津に対してはあります。
結構・・・というか、彼は思いっきり情熱・熱血タイプかも。冷静に見えますが違うとふんでます(笑)

>時間がすべてを解決するような気さえしてきます

私もこの見方に一票です。
とにかく、羽生という存在に対しての秋津の気持ちは変わらないと思うんです。久我もそれを承知で、そのままを愛していくのじゃないかなぁと
・・・なんか後半あたりは思いっきり私の希望ですが(笑)

私もまたお伺いさせていただきますね**
(と言うか、見てます。コメント残せなくて申し訳・・・ごほ)







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