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INDEXうえだ真由8年目の約束

8年目の約束 8年目の約束

うえだ真由&紺野キタ(幻冬舎ルチル文庫)

ルチル創刊第二弾のラインナップである作品なんですが、まだ冊数はありませんがルチル文庫はおおよそ好みにあった作品が揃うので注目しています。旧作の再出版もあるので助かりますしね。基本的に幻冬舎関連は自分の肌に合うものが多く(なんたって六青先生デビューしてるし)購入率は高いのですが、今回ルチル文庫創刊によって楽しみが増しました。文庫という形の方が持ち運びもしやすいし場所もとらないので助かるというのも嬉しいところ。9月のラインナップも魅力的なものが多く6冊中4冊を購入予定です。
イラストの持つ力というのか、紺野キタ先生のイラストが格段にストーリーの雰囲気を高めてくださっています。紺野キタ先生の絵はかなり好きで、あっさりとした絵柄で力強さとか無縁そうな画風なんですが、何故かキャラの感情を強く感じてしまうのです。特に本作のような切ないストーリーにはうってつけの方だと思う。

高校三年の夏、親友の榊晴一(攻)に告白されたった一度だけ身体を重ねた中澤千波(受)は幸せだった日が突然終わってしまう経験をしており、八年たった今でも晴一を忘れられずにいます。あの夏、幸せな日が送れると信じた二人は、当時晴一に振られた女の子が当て付けで自殺未遂を起こした上に、嘘によりその責任を晴一へ負わせたため二人の日々は終わりを迎えた。千波の生まれ育った家は歴史のある旧家であったため、家で力を持つ祖母の阻みもあり晴一との付き合いを一切断たれてしまい、晴一一家は土地を離れ長い時間が流れた。
二人の再会から恋心が再燃と言うよりは、二人とも長い間それでも好きだったという想いを持ち続けていたからこそのストーリーです。千波の祖母は体面や保身に必死になる人間だったものですから、子供だった二人は突然の事態になすすべもなく離れ離れにされてしまう。こう言っては何ですが、どちらかと言うと自由に育てられてきた私にはこの祖母は腹立たしいだけでした・・・土地柄など色々考えると仕方ない事だとわかってはいますが、自分だったら即刻家を出てしまうような感じだなと思ってみたり。そして事件を起こした女の子には、ハッキリ言って同情心の欠片もわきません。今回のこの女の子には呆れしか感じなかった。結局、二人の恋は周囲の人間によって終わりを迎えたも同然です。忘れられずにいた事も自然な流れでしょう。

とにかく、最初から最後まで切なくて胸の痛いストーリーでした。こういう展開には弱いので思わず心臓の辺りを押さえながら読むはめに。切なくて泣けるわけではありませんでした。しかし、思うに泣けるならばまだましで、主人公達が涙を見せない分だけ自分も泣けず、泣きたくても泣けない感情が伝わってしまうから余計に辛かった。過去のエピソードも現在のエピソードもどれも、どこかに誰かの悲しみが潜んでいます。晴一と千波だけではなく、祖母の悲しみや親の悲しみ・・・種類は違えど、二人の関係が悲しみを生み出しているのも事実です。好きだからそれで良いというわけではない事を全員が知っている。遂げることで悲しみを呼べば阻むことでも悲しみを呼ぶ。
一つの無間地獄のような連鎖から逃れるには、どうしても犠牲が必要でした。もちろん、誰も傷付けずに済むならそれが最良ですが、そんな運の良い結末を迎える事は二人には無理。だからこそ、千波は今度こそ晴一と共に在る事を選択します。時間が解決してくれれば一番ですが、古い考えは凝り固まった因習となり、それが無くなる事は容易ではないでしょうし、何よりも8年前誰よりも苦痛を負ったのは晴一だっただろうから今度は自分が歩き出そうと千波は考えたのかもしれません。

それでも、家族を犠牲にし選んだ晴一という答え。それを千波が後悔しなければ良いと思う。長く居ればいざこざや喧嘩もあるでしょうし、涙することも我を失うこともあると思う。それでも、本質的な部分でこの経験が二人を縛るものではなく、繋ぐものとなって残るといい・・・そう、思う。そう思わなければ残された人間があまりにも報われないし、犠牲を立てた本人達こそが一番苦しむから。ここまでくると良い悪いの答えは出ませんし、誰が一番犠牲になったかという事も問題ではないと思う。二人は、そうするしかないのだから。そうすることを選んだのだから。せめて幸せでいてくれと、それだけです。


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HACCA at 2005.08.24 | Comments (2) | TrackBack (3) | Clip!! | BlogPeopleTags | はてなブックマーク

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コメント
Jura(05/10/04)

こんばんは、今日読み終わりました、本当切ない話でしたね。
もう胸が痛いくらい、どちらを取ってもだれかが悲しむ事になる
千波にとっても結構苦しい決断だったのじゃないかと思うけど

また駄目だったか、と来ない千波の事を待っていた晴一の気持ちを思うと
この決断でほっとしたり。
本当にハッカさんの言うようにこれからも幸せであって欲しい二人ですね。

HACCA(05/10/07)

>>Juraさん
こんばんは?。やはりどなたにも辛いお話だったようですね。この作品は。
こう言ってはなんですが、ある意味BLにおいては最も辛く悲しいテーマの1つですよね・・・避けては通れない道だけに痛々しいです。

>千波にとっても結構苦しい決断だったのじゃないかと思うけど

これはですね?仕方ないですよね、もう。
私は犠牲と書きましたけど、全てを得られる結末というのは実際は数少ないと思うのです。現実であれば尚更。
そんな中で、どうしようもなかったとは言え千波の下したあの決断は確かに辛く苦しいものだったでしょう。しかし、後向きに考えすぎても幸せにはなれないと思うので、この決断が幸せへの一歩であると信じたいです。
もちろん、家族への申し訳なさや苦しみは一生背負い込んだ上で、です。
元よりこれを忘れてしまっては本当の幸せはないだろうし、千波の性格じゃありえないと思うので心配はしてませんけど。

>これからも幸せであって欲しい二人ですね

ホントです。
この作品を読んで思うのはもうそれだけですよ!







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