うえだ真由&あさとえいり(新書館ディアプラス文庫)
うえだ先生は後書きでよく「ベタ」なものが好きだと仰ってますが、声を大にしてお伝えしたい。「私もです」と(笑)そして今回はそんなベタ王道のような作品ですとの事で、読んでみると確かにそうなんですが先生ご本人と同じくらいベタ王道が大好きな私はハマってしまいました・・・。後半どころか中盤くらいからですね、こう・・・泣いてばかりだったというか・・・恥ずかしいことに。ちょっとグッときて波が静まったかと思えばまたグッときたりして、の繰り返しでした。ベタ王道上等!とか本気で思ったくらいでしたよ。ただ、設定としては好きが分かれそうな感じかもしれませんが。
主人公の松岡里央(りお・受)は大学で出会った時からの親友である坂口陽史(はるふみ・攻)に恋をしています。しかし、同性であるという事や勇気のなさ、諦めのような思いから本人に気持ちを伝えることができず、あまつさえ陽史の恋の手助けをしてしまい、一人誰にも言えない思いを抱えている。一方、そんな里央の気持ちを当然知る由も無い陽史は恋人である黎子との恋に悩んでいた。政治家の娘であり婚約者も既にいるという黎子ではあるが、それでも二人は誰にも知られないように隠れながら逢瀬を重ねていた。そんな三人の関係が一瞬に破綻する出来後が起きてしまう。黎子の留学が決まり離れ離れになってしまう事への不安からか、見送りのために里央と共に空港へ行った帰り、注意力が散漫になっていた陽史は対向車線で無茶な追い抜きをしようとしたトラックに気付かず二人は正面衝突という大事故に見舞われる。そして里央が目を覚ました時、陽史は二年分の記憶を失ってしまっていた。
うえだ先生のお言葉通り、ベタで王道な設定と展開です。里央は陽史が記憶を無くした事に対し悪いとわかっていつつも思い出すまでの間だけでも自分が恋人でいられるかもしれないという夢に逆らいきれず、陽史の言うまま付き合っていたのは自分じゃないかという疑問に黙秘という形で肯定してしまうわけです。確かに里央は陽史を騙したわけで、嘘をついていたという事は紛れもない事実。しかし、この里央の気持ちを責める気になれないんです・・・誰よりも、本人が最初からずっと後悔しているから。自分の犯した罪の深さに傷付き苦しんでいるから。自業自得と言えばそれまでなんですが、叶わぬと、手に入らぬと思っていたものが思いがけず自分のものになるかもしれない。そんな甘美な誘惑を一途に恋をしていた人間が逆らえるだろうか?と思うと、容易ではないとわかるから。
里央本人が一番苦しみながら、でも陽史の傍にいることが出来るという幸福感との狭間でそれを手離したくないと思ってしまうのも自然な流れだと思う。人間は欲深い生き物なのだから。ずっと求めていたものが相手であれば尚の事です。ふてぶてしさが里央にあればまた違ったかもしれませんが、最初から後悔しているものだから悪い事をしているのに、健気・一途に見えてしまい思わず涙が出たりして。うえだ先生はこういう部分を上手く表現するからつい泣かされてしまう事が結構あったりします。
里央の気持ちもわかるからという訳ではありませんが、そもそも陽史と黎子の交際に疑問がある私は結果的にはベストな結末に落ち着いたよなと思った。私は割りと単純で白黒ハッキリさせたいタイプの人間なので、黎子の行動がどこか我侭にすら感じました。好きだけど自分の立場を捨てきれないのであれば、最初から陽史と携帯番号交換したりするなと言いたい。里央の求めた「一瞬でも、少しの間だけでも」というものとが明らかに種類が違う。降って沸いた幸せではなく、自分から掴んだ幸せなのだから。自分の友人だったら叱り飛ばしているところです。自己満足にしか見えなかった。
陽史に関しては微妙かな・・・といった印象。彼は心のどこかで「もしかしたら」を信じていただろうし。事故により記憶をなくした事によって、むしろ陽史と黎子は悲しいかもしれないけど、傷の浅い終わり方をしたと思います。もちろん里央のした事は褒められたものではないけれど。黎子に関しても個人感情で上のように書きましたけど、里央と同じく求めたものが手に入るという幸福感に逆らえなかったという部分は共感できますので、結局は誰が悪いわけでもなかったのでしょう。事実、事故がなければ三人はまた違った道を歩んだのかもしれないのですしね。どのみち人生というものは予想でも出来ない事が突然起こったりするものですから、その流れに任せた結果なだけかもしれません。

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腐女子の萌え処(05/11/11)

kotonone::詞の音(06/02/16)
>>Juraさん
こんにちは!
そう言えば、ここしばらくは作品が重なることってなかったですよね?。
まぁ私が2006年度の目標である旧作への取組強化を実行中でもあるので、新作感想に手をつけてないのが理由かもしれない・・・。
ちなみに、でも新刊関係は他サイト様の感想で十分得られるだろう、と他力本願な考えでいるのはナイショです(笑)
>絵師のあさとえいりさんのイラストも?
ですねぇ。あさとえいりさんがイラストになるとやっぱり「綺麗」とかそういった類のイメージになるので、この作品には合っていたと思います。そういえば、これからの出版物であさとえいりさんや雪舟薫さんが担当予定の作品が相次いで延期になったりで、何かあったんだろう・・・と気になっていたりします。
Amazonで予約していた「新宿探偵」も雪舟先生がイラスト担当だったはずなんですが、先日Amazonから発売中止のお知らせがきてしまいガックリしていたところです。どうしたのかなあ?。
>足りないところを補いつつうまくやっていってくれそうですね
ですね・・・と言うか、そうであって欲しいですよ、マジで(笑)
色々とごたごたした二人だっただけに、余計そう思います。
でもこの二人って本当に「共に成長」といったかんじの表現が似合いそうですよね。
久しぶりにTB送らせていただきます
やっぱり私この方の書かれるお話って好きだわ。と実感した作品でした。
絵師のあさとえいりさんのイラストも話の雰囲気にとてもよく合ってて良かったです。
このふたりならお互いに足りないところを補いつつうまくやっていってくれそうですね。