松前侑里&あさとえいり(新書館ディアプラス文庫)
松前先生の新たな作品は流星本。後書きで先生が流れ星に願いを3回唱えられないと書かれていたのですが、それを読みふと思ったことが・・・私、唱えるどころか流れ星に遭遇した事すらない・・・あれ?もしかしてコレって特殊?もしかして誰でも一度くらいは遭遇してるの??あ、映像でなら見たことはあるんですけど(多分、唱えてもムダ)。うーん、もしかして私ってあまり運が良くない?
毎回後書きにて次回作の事を告げて下さる先生なんですが、なんと次回ははちみつ本の番外編とのこと!きっと誰もが気になってはいたであろう脇キャラだった彼らが次回の主人公のようです。楽しみ!でも、はちみつ本は私からすると理解するのに手間取った作品だったので読む前には気合を入れておかないとな、と思う。ここしばらくの松前作品は非常に理解しやすいストーリーだっただけに、久々に松前先生らしい展開に挑むことになりそうかも。ま、でも私にとってはそれでこそ先生の真骨頂という気もしますけどね。
親を亡くし姉と共に引取られていた親戚宅で従兄弟にいじめを受けていた吉川晶(あき・受)は自立して迎えに来てくれた姉の瑠璃とその夫・子供と共に暮らすようになるが、いじめの影響か晶は他人との接触を好まない人間になっていた。しかし安心できるはずの自宅でも晶はどことなく落ち着けなかった。そのため誰にも言わずに深夜のコンビニでバイトを始めることにする。そしてそこで出会ったのが毎日同じ弁当を買っていた本宮櫂(攻)にナンパされる。
晶は他人との接触を好まないだけで恐怖症とか嫌悪感を持っている人間ではありません。しかし、それも姉家族が彼を迎えにこなければどうなっていたかわからないかもしれない。しかも晶が自宅で落ち着けなかった理由は、姉の夫である千也(せんや)に恋をしてしまっていたからです。この作品は晶視点で物語が進んでいくのですが、実は姉の夫を好きになってしまうという設定って、想像以上にヘビーだったりするんですよね。気持ちに忠実になれば下手したらひとでなし扱いになっちゃうし・・・勿論そんな展開にはなっていませんけど。
基本的な流れとしては他人との接触を好まない晶を櫂が癒していくといった感じです。そもそも晶は千也への想いが恋だともわかっていなかった。それに気付いたのも櫂との出会いがきっかけです。でも、ラストまで読むとわかると思いますが結局は千也への想いはまだ恋心とまでは言えない気がします。恋心へ姿を変える前段階の親愛の情レベルという感じ。とは言え、晶も恋心に近い欲求まで抱くようになりつつありましたので、恋と言い切っても問題はないでしょうね。こう・・・淡い初恋といったイメージ。
櫂は序盤はとても広い心を持つ少年に見えましたが、ラストに近づくに連れどんどん年相応(晶も櫂も高校生)な人間臭さを感じ取れたのは親近感アップでした。そして、その部分こそが今回の松前作品を理解しやすいものに仕上げていると思います。読みながら単純に「櫂もまだまだ子供なんだよなぁ・・・格好付けていただけなんて」と思えます。例えばここで櫂が晶の恋心を見守るだけ&自分の想いを知っていてくれれば十分みたいなキャラでいたとしたら、いつもの理解に時間のかかる松前作品になっていたと思います(はちみつ本や猫本がこの類)。
今回は主人公二人が高校生という事もあってか、時々熱さを感じさせつつも基本は優しい物語でした。ただ、晶の気持ちの遷移が今ひとつ感じ取りにくかったという部分は気になりました。千也を好きだった彼がその思いに区切りを付け、新たに櫂を好きになるまでのその繊細な部分描写が欠けていたように感じました。晶の気持ちが移り変わる場面での背景や情景はきちんと作られているのでわからないという事はないんですけどね。でも松前先生はこういう表現(繊細さ等)が元々お上手だとわかっているだけに、今までの松前先生の作品を知っていると、今回は物足りなさを感じてしまう。
自分でも言っている事が矛盾しているのはよくわかっているのですが、私にとっては理解するのに苦労する松前作品が最近はどれもわかりやすいものである事は喜ばしい事なんです。でも、そろそろあの難解さが懐かしくさえ思えてるなんて・・・自分で自分を追い詰めるようなものなんですけど、そういう感覚ってありますよね?敢えて厳しい状況を望んでしまうようなこの感覚って。今ちょっとそういう気持ちなので、次回のはちみつ番外編はかなり楽しみです。久々に頭を悩ませないといけなさそうだしね(笑)

