あすま理彩&あさとえいり(海王社ガッシュ文庫)
神父というよりヴァンパイアという単語に惹かれて購入してみました。あすま先生の作品を購入するのも久しぶり。ガッシュ文庫のファンタジーものは確率的に見ても当たりの場合が多いので久々に背徳的な人外モノを読んでみたいなぁと思ったのをきっかけに購入を決断したのでした。
結婚どころか恋愛も許されない神父の身でありながらボランティアで教会に足を運んでくれる俊樹に報われない恋心を抱いてしまった聖良(せら・受)は、もうすぐ結婚する俊樹への想いに日々身を焦がし続けていた。生まれてすぐ檜の木の下に捨てられていた聖良を引き取り育ててくれた司祭は体調不良で入院を余儀なくされており、一人きりで嵐の夜に孤独感を耐えながらも教会を守ろうとしていた聖良は、聖水を汲むために地下泉のある石部屋へ降りていく。誰もいないはずのその場所で聖良の前に現れたのは明らかに人ならざる雰囲気を纏った黒尽くめの吸血鬼・ジン(攻)だった。
オール書き下ろしでページ数も250近くあるので結構読みでがありました。しかし、その割には性描写が多くそこは食傷気味の感が拭えません。後半になるに連れその手のシーンは斜め読みしてしまいました。神父という職業を考えると相手が人外というだけでなくとも背徳的な雰囲気が漂うものなので、必要以上にそういうシーンが多くなるのは仕方ない気もするのですが、回数が多いとやっぱり有難味とか高揚感に慣れが出来てしまうんですよね・・・。それはあすま先生もわかっていらっしゃるのか道具を使ったり精神的に追い詰めてみたりと少々残酷な手法を交えて飽和度の解消をされてはいますが、一度感じてしまった飽食感はなかなか払拭しきれるものではないものですね・・・。
それに比例するように、性描写以外の部分で物足りなさが残りました。基本的に性描写以外の部分がとても良かっただけに、こちら側の描写が少ない事はのめり込むにはネックでした。また、突然キャラの心理描写が入れ替わっていた点も気になる。今の今まで聖良の気持ちで読んでいたものがいつの間にかジンの心理描写になっていたりする事が何度かあり残念だったと思う。過去の記憶についてのエピソードとの境目も解り難い。この作品のおもしろさを考えると上に挙げたような弱点はちょっと勿体無い失点だったように思います。
まず聖良という人間が許されない恋をしているという事がこの作品が進む上での重要なポイントではあるのですが、実は序盤からジンについては「何か因縁があるぞ」と思わせる表現が多数見受けられました。そしてそれがヴァンパイアであるジンのひどく人間臭く見せてくれる。彼が聖良を無理矢理手に入れようとしたのも全ては理由があってのことなんですが、それを少しずつ見せてくれるので聖良よりもジンへの同情が強かったです。
人外モノと言うと人間側が不利なパターンというのが多いのですが、この作品では聖良の健気さや弱さを前面に押し出している割にはジンの方が圧倒的に弱く感じてしまう。そういう部分が一番おもしろさを感じました。何故ジンが聖良の前に現れるようになったかという過去の出来事も含め、すごく純愛っぽいんですよね。性描写の多さが気になった理由はこの純愛度が霞んでしまうからです。無垢である必要はありませんが匙加減を間違うと良作も凡作に堕することになるだけに非常に残念。難しいものなんですね、やっぱり。ただ読むだけの私が言うべき事ではないのかもしれないですが。
ジンが残酷な仕打ちに出てしまうのも聖良を愛するが故で、でも本人が精神的に最も弱っている時にそばにいたのもジンだけだった。それに聖良が気付き、過去の出来事も含めて少しずつジンへ気持ちが流れていく過程は純愛の様相を見せてくれます。ちょっと贅沢を言うなら聖良視点が中心であるためジンの心情がもっと知りたかった。彼が本当は心の中でどれほど聖良を想っているのか等々・・・ま、だからと言って序盤での聖良への仕打ちが許されるわけではないのですが。
じゃあどうすれば彼らは最初から少しでも穏やかでいられたのか?と考えてみたのですが、ジンが最初から説明した上で聖良と接していたら(聖良ならば驚き怖れつつもジンの話を聞きそうなので)すれ違いや遠回り的な展開はなかったのかもしれない・・・という根本的な部分に戻ってしまったので慌てて考えるのを止める事にしました。それを言ったら全てが成り立たなくなるのでツッコミを入れてはいけない部分なんですよね。危ない危ない(笑)
総体的に見て、吸血鬼や神父といったキーワードが想像させるような雰囲気と展開は存在していたと思います。耽美的とまでは言えませんがそれに近い作品ではあったかな、と。この手の雰囲気の作品は久々でしたが読む前の予想よりは楽しめたと思います。やはり人外側であるジンが純愛要素を持っていたというのが最大の勝因ですね。

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